断捨離を始めた頃、私は、部屋をすっきりさせたいと思っていただけでした。洋服を減らし、物の数を見直し、朝の時間に余裕ができた。そこまでは、目に見える変化でした。
けれど、しばらくして気づいたのです。一番大きく変わっていたのは、部屋でも時間でもなく、不安の量でした。以前の私は、どこかで常に焦っていました。
・もっと持っていないといけない
・今のままでは足りない
・何かあったら困るかもしれない
そんな思いが、はっきりと言葉にならないまま、心の奥に居座っていた気がします。
なぜ、物を持つと安心するのか
欠乏マインドセット(scarcity mindset)。これは、足りない・失うかもしれないと感じると、人は過剰に確保しようとするというものです。
お金、時間、評価、そして物。足りないかもしれないという不安は、私たちにもっと持っておこうと行動させます。
セールでつい買ってしまう。まだ使えるのに手放せない。予備をいくつも持ってしまう。
それは浪費というより、安心を買っている状態に近いのかもしれません。
私もそうでした。着ない洋服を残していたのは、いつか必要になるかもしれないという思いから。本当は着ないと分かっているのに、手放すのが怖かったのです。
手放すことは怖い
断捨離の途中、ある洋服を手に取ったときのことを覚えています。ほとんど着ていないのに、ないと不安かもと思いました。これは洋服の問題ではなく、失うことへの恐れなのだと、気づきました。
人は、得る喜びよりも、失う痛みを強く感じると言われています(損失回避バイアス)。だから、不要だと分かっていても、手放すことに抵抗が生まれます。
でも、その洋服を思い切って手放したあと、私は感じました。
「あれ?困らない」
それどころか、クローゼットが少し軽くなり、心まで軽くなった感覚がありました。

捨てるのが不安だった私は、何かと理由をつけて捨てれずにいました・・・
なくても大丈夫という体験

不安が減った理由は、とてもシンプルでした。なくても大丈夫を、実際に体験したから。
予備がなくても困らない。選択肢が少なくても平気。たくさん持っていなくても、ちゃんと暮らせる。頭で理解するのと、体験するのでは、安心感の質が違います。
私は物を減らすたびに、大丈夫・自分はやっていけると感じる力、自己効力感を感じていきました。
不安の正体は未来
振り返ると、私が抱えていた不安は、今ではなく未来へのものでした。
・将来困るかもしれない
・収入が減るかもしれない
・失敗するかもしれない
未来はコントロールできないからこそ、不安になります。だから、物という目に見えるもので安心を作ろうとしていたのかもしれません。
でも、断捨離を通して分かったのは、安心は物の量ではなく、自分への信頼から生まれるということでした。
断捨離は心に余白を作り出す
物が減ると、管理も減ります。探す時間も減ります。迷う時間も減ります。すると、心に余白が生まれます。
余白があると、人は落ち着きます。落ち着くと、思考がクリアになります。不安は、余裕がないときほど膨らみやすい。逆に、余白があると、同じ未来でも過剰に怖くならない。
断捨離は、単に物理的な整理ではなく、心の容量を広げる作業だったのだと思います。
不安がゼロになったわけではない
もちろん、今も不安はあります。将来のこと、お金のこと、人生の選択。でも、不安に飲み込まれなくなりました。
なくても大丈夫だった経験があるからです。あのとき洋服を手放しても困らなかった。あのとき予備を減らしても平気だった。
その小さな成功体験が、今の私を静かに支えてくれています。
まとめ

これで十分。たくさんあるわけではないが、ちゃんと足りている。その感覚は、物に対してだけではありませんでした。今の自分も、完璧ではないけれど、全く問題ない。大丈夫。
断捨離は、物を減らす行為に見えて、不安を少しずつ手放す行為だったのかもしれません。
持たなくても大丈夫。
足りなくても大丈夫。
未来が分からなくても大丈夫。
そう思えたあの日から、私の不安は少し小さくなりました。


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