なぜ、旅先では呼吸が楽になるのでしょうか。それは単なる気分の問題ではなく、心理学的に説明できる心の仕組みが関係しています。
日常は、想像以上にエネルギーを使っている
私たちの脳には注意資源という考え方があります。これは、集中力や判断力に使えるエネルギーが有限であることを指します。通勤ルート、仕事の判断、人間関係、SNS、家事。日常生活は、絶えず選択の連続で、脳に負担をかけています。この認知的負荷である小さな判断の積み重ねが、知らないうちに心の緊張を生みます。
この状態が続くと、呼吸は浅くなります。なぜなら、私たちの体は戦うモード(緊張状態)に近づくからです。

気づかないうちに生活するだけで、たくさんの選択をしエネルギーを消費するから、夜には疲れてしまうのも納得です・・・
環境が変わると、脳のモードが切り替わ
旅に出ると、環境が一気に変わります。
・見える景色
・聞こえる音
・香り
これらの変化は、脳に新しい刺激として届きます。心理学には、自然や新しい環境に触れることで、使い続けていた注意資源が回復するという考え方があります(注意回復理論)。
自然や森の多い場所や、広い湖畔のあるような街では、視界が開け刺激が穏やかになります。この穏やかな刺激が、脳の過緊張をやわらげるのです。結果として、呼吸も自然と深くなります。
非日常は役割から解放してくれる
もうひとつ重要なのは、自己概念の変化です。日常では、私たちはさまざまな役割を持っています。
・会社員・上司
・夫・妻
・父・母
しかし旅先では、その肩書きが一時的に薄れます。ただの一人の人として、その場にいる。新しい環境に身を置くことで、固定化していた自己イメージがゆるみます。役割から解放されると、無意識の緊張も下がります。
国内旅行と海外旅行で違う深呼吸
国内旅行の場合、安心感が大きく働きます。言葉が通じる安心感の中で、安全が確保されている状態は、安全基地に近いものがあります。安全を感じると、人は深く呼吸できます。
一方、海外旅行では別の作用が働きます。文化や言語が違う環境は、最初は少し緊張します。けれども経験を重ねると、自分はできるという感覚(自己効力感)が高まります。この自己効力感は、深い安心を生みます。そのときの呼吸は、日常とはまた違う解放感を伴います。
五感が整うと呼吸が整う

旅先では、五感がゆるやかに刺激されます。
・波の音
・森の匂い
・石畳の感触
・光の色
これらは、大脳辺縁系という感情に関わる部分に直接影響を与えます。感情が落ち着くと、自律神経も安定します。つまり、旅は心を整えることで呼吸を変えているのです。
心を整えれば、やさしく過ごすことができる
旅から帰ったあと、少しだけ世界の見え方が変わることがあります。
・以前よりイライラしにくい
・空を見上げる時間が増えた
・深呼吸がしやすい
それは、旅が心の緊張をリセットした証かもしれません。旅は、逃避ではありません。自分の心を整える大切な行動です。
もし最近、呼吸が浅いと感じているなら、少しだけ環境を変えてみるのもおすすめです。近くの自然でも、静かなカフェでも。環境が変われば、心が変わる。心が変われば、呼吸が変わる。そして呼吸が変われば、もう少し私たちはやさしい気持ちで過ごすことができると思います。

ステキな旅を!


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